「いびき」について

いびきの正体

通常呼吸は、鼻から空気を吸い込み咽頭を通り肺に至ります。
鼻から咽頭までの道(上気道)には、狭いところや凹凸が有り、呼吸の時これが気道抵抗となって自然的に音が発生します。この発生した呼吸音が、いびきの正体です。

試しに強く息を吸ったり、吐いたりして見てください・・・。
呼吸音のするのが解ります。
睡眠中、スースー、スヤスヤと寝息を立てることが有りますが、これも自然的な呼吸音で、この程度のいびきは、健康に支障はありません。

人間は呼吸の際、誰でも呼吸抵抗がありますが、その抵抗が高くなるにつれて他人にも迷惑な「いびき」となります。

いびきのメカニズム

なぜ上気道の抵抗が大きくなっていびき(呼吸音) になるのでしょう。

  1. 鼻が詰まったりして苦しくなり口を開いて寝る。
  2. 鼻の病気が原因で鼻の通りが悪いので口を開いて寝る。
  3. 普段口呼吸の習慣がついているため口を開いて寝る。
  4. 睡眠のために顎の筋肉が弛み、顎が後退して気道を狭めさらに口を開けて寝る。

ではなぜ、起きているときはいびきをかかないのでしょうか。

それは、起きている時は、気道が広がっているので、空気の出入りがスムーズであるためいびきをかかないのです。
しかし、仰向けになると重力の影響を受け、口を開き、顎が下がり、特に舌の根元が下がって気道を塞ぐため、空気の出入りが悪くなり、狭いところを空気が通ろうとし、喉の組織を振動させたりすることで音が発生するのです。

いびきの起こるさまざまな原因

いびきの起きる原因は、上気道が、いろいろなことが原因で狭くなることです。
原因としては、上気道の炎症や充血、乾燥、腫れ、たるみ、過剰分泌などが有ります。

  1. 口を開けて寝る。
  2. 心身の疲労やストレス。
  3. 老化による筋弛緩。
  4. 飲酒、精神安定剤などによる筋弛緩。
  5. 鼻腔や咽喉、咽頭の気管異常。(扁桃腺肥大、小顎症、鼻中隔湾曲症など)
  6. 肥満。(軟口蓋や咽頭壁に脂肪がつき、咽頭が肥大し上気道を狭くする)
  7. その他内科的トラブルなど病気の場合。

4~7の場合は専門医の診断をお勧めします。

危険ないびきといろいろないびきの音

いびきの音はさまざまですが、その中には、極めて注意を要するものが少なく有りません。
いびき自体、心臓にかかる負担は大きいと言われていますが、往復のいびきは疾患を伴うことが多く、眠っていても逆に疲労がかさむ事があり、さらに大きないびきの後に呼吸が止まるいびきでは、無呼吸症による内臓への影響が指摘されています。

ベッドパートナー(奥さんでも、恋人でも、友人でも同じ部屋で寝られている方)から、ひどいいびきと寝ている間の呼吸が止まっているといわれる方は、是非専門医の診察を受けてください。

いびきは、健康を害するさまざまな病気のもとです。

空気が出入りする上気道の抵抗が大きくなるにつれ、いびきは激しくなり、周囲に迷惑をかけるばかりでなく、 健康に重大な影響を及ぼす睡眠時無呼吸症候群(SAS)を引き起こします。
いびきをかくことは肺に入る空気の抵抗が大きい訳ですから、呼吸器の空気のフィルターが詰まっているのと同じことです。

したがって肺に送り込まれる空気の量が少なくなるため酸素の摂取量も減少し、軽い酸欠状態になり、血液中の酸素量も 減ってしまいます。
また呼吸が途中で止まる無呼吸症状は、一晩に何百回も引き起こすのでさらに酸素の摂取量が減少してきます。

このように症状が重症化してくると睡眠時無呼吸症候群となるのです。

睡眠時無呼吸症候群の原因

睡眠時無呼吸は、上気道(空気の通り道)が閉塞することにより起こります。
閉塞の原因は、首周りの脂肪の沈着、扁桃肥大、アデノイド、気道へ舌が落ち込む、舌が大きい(巨舌症)、鼻が曲がっているなどがあげられます。

また、欧米人の睡眠時無呼吸症候群の患者さんは肥満の方がほとんどですが、日本人の中には顎が小さい(小顎症)ため、気道がふさがれやすく、やせているのに、SASである方もいらっしゃいます。
ですので、睡眠時無呼吸症候群の患者さん全員が太っていると思うのは間違いです。

どのような症状がでるのでしょうか?

睡眠時無呼吸症候群はさまざまな症状を伴います。

いびきや夜の睡眠をきっちりとれていないことから、昼間足りない分を補おうとして眠気が発生したり、起床時の頭痛、熟睡感の欠如、睡眠中に脳が覚醒状態になる(中途覚醒)やインポテンツなどがあります。

交通事故の危険性

居眠りは、睡眠不足のため起きる日中傾眠です。
昼間車を運転している時、目を開けたまま瞬間的に寝てしまう現象をマイクロスリープと言い、危険な状況に対応できないばかりか、自ら事故を引き起こす大きな原因となります。
このため危険な状況下に置かれたり、スピードによる危険な状況判断ができません。

この居眠りの原因は、大きな「いびき」による無呼吸症によるものといわれています。
無呼吸症状は苦しいので目を覚まし、半覚醒状態を続けることになり、ほとんど熟睡していないため昼間に睡魔がおそうことになるのです。

このようにいびきは、本人の健康を奪うだけでなく、多くの事故やトラブルに周囲の人達まで巻き込む危険性をはらんで いるもので、すでに病気と言っても過言ではありません。

ある報告には重症の睡眠時無呼吸症候群の方は、飲酒運転よりハンドル操作をミスする可能性があると記載されています。
道路交通法でも眠気を訴える疾患に罹患している方の、免許を更新しない・剥奪するという措置がとられることがあります。

睡眠時無呼吸症候群はしっかり治療をしてコントロールすれば、眠気はほぼ消失します。
事故を防止するためにも、専門施設を受診するようにしましょう。